外部の研究機関や大学、ベンチャー企業と提携して新薬創出を行う

オープンイノベーションが活発

製薬企業は、研究開発における生産性の低下、新薬創出の難易度の上昇、個別化医療の進展などの影響から、従来の自前主義をやめて、外部の研究機関や大学、ベンチャー企業などとコラボレーションすることで新薬創出を行う「オープンイノベーション」の取り組みを本格化させています。

武田薬品は、海外の研究拠点を結ぶハブ拠点として湘南研究所を設立し、外部の研究所と共同研究を行う「湘南インキュベーションラボ」を立ち上げました。

最初のプロジェクトして、The BC Cancer Agency(カナダ)と遺伝子解析による創薬標的探索の共同研究を行うことを発表しました。エーザイもアルツハイマー型認知症やパーキンソン病などの神経疾患での研究を推進する目的で、ロンドン大学とTherapeutic Innovation Group(TIG)を設立しました。

また、アステラス、第一三共、塩野義製薬は、創薬の公募型研究プログラムをスタートさせています。中でも塩野義製薬は「シオノギ創薬イノベーションコンペ」をスタートさせており、2012年は糖尿病、肥満、慢性腎不全などの15領域を対象としています。同社は海外でも同様の取り組みを行っており(SIONOGI Science Program)、積極的にオープンイノベーションを行っています。

海外の製薬企業の取り組みはさらにオープンな形を採用しており、例えば臨床開発の効率化を目的に創設されたNGO「TransCelerateBioPharma」には、ファイザー、アストラゼネカ、イーライリリー、グラクソスミスクラインなど10社が加盟してます。

なかでもオープンイノベーションに積極的なイーライリリーは、世界の大学やベンチャー企業に対して無料の薬理試験サービスを提供し、研究者がイーライリリーのデータベースを使用して化合物の評価を行うことができる「Open Innovation Drug Discovery Program」を開始しています。

このプログラムを無料で開放する代わりに、新薬の開発提携の優先交渉権をイーライリリーが取得できるシステムとなっており、これまでに約250の企業や研究機関と提携し、約70,000件の化合物がスクリーニングされています。