研究開発費の売上に対する比率は非常に高いものの、成果は伸び悩みが続く

新薬創出の難易度が高い疾患が多い

製薬企業は他の業界に比べて売上に占める研究開発費の比率が非常に高いことで知られています。情報通信、電気機器など国内主要業界の比率が5〜6%なのに対し、国内大手製薬企業10社は約19%となっています。

米国製薬工業会(PhRMA)のデータによると、加盟する製薬会社の研究開発費用は、2007年まで右肩上がりで増加(2007年は479億ドル)でしたが、それ以降はほぼ横ばいとなっています。

ノバルティスファーマ、メルク、ロシュなどのグローバル製薬企業は、2010年から2011年にかけて研究開発費を減少させています。

研究開発の成果は「新有効成分含有医薬品数」という形で評価されますが、その推移を見てみるとFDA(米国食品医薬品局)が承認したかすは2005年に38から20と半減しており、その後大きな伸びを見せていません。一方、国内で厚生労働省が承認した新有効成分含有医薬品数を見てみると、2009年以降延びていますが、2000年の水準には至っていません。

研究開発費が高止まりしているにもかかわらず、新有効成分含有医薬品数が伸びていないことは、研究開発の生産性が低下していることを示しています。生産性が向上しない原因は、米国での臨床試験の実施基準がより厳格化されたことと、研究開発の主眼が、従来の「生活習慣病」から疾患メカニズムが複雑な「中枢神経疾患(アルツハイマー等)」や「自己免疫疾患(関節リウマチ等)」にシフトしていることなどが挙げられます。

そのほか、製薬企業が既存の医薬品の価値向上に注力していることも関係しています。具体的には、新効能医薬品や新用量医薬品の証人数が大幅に増加していることに示されます。承認された新効能医薬品は2004年まで10品目程度でしたが、近年は30〜40品目と大きな伸びを示しています。新用量医薬品数も従来の10品目程度から、2011年には22まで増加しています。

今後、がんや自己免疫疾患に対する治療薬など上市後に新効能や新用量を追加していく薬剤が増加するに比例して、新効能・新用量追加による価値向上に向けた注力度が高まると考えられます。