薬価・診療報酬改定で活気づく後発医薬品市場

社会保障費の抑制策

右肩上がりで上昇を続けている社会医療費の増大にブレーキをかける数少ない有効策とされている後発医薬品。アメリカ、イギリス、ドイツのように高い普及率(数量ベースで50〜70%)には程遠いですが、徐々に普及が進んできました。

日本ジェネリック製薬協会の調査から、近年の後発医薬品の数量シェアの推移を見てみると、その変化の状況がわかります。調剤報酬改定で保険薬局での使用が進んだ2010年度第1四半期は、前年度比で2.1ポイント増の22.4%に上昇しました。

流れが変わったのは、2011年11月の薬価追補収載からです。1,000億円規模の大型製品である「アリセプト」と「リピトール」の特許切れで後発医薬品の参入が相次いだため、同年の第3、第4四半期と連続でシェアを伸ばしました。

2012年は先発医薬品市場で2,800億円程度の規模のある「パキシル」や「ニューロタン」なども特許切れを迎え、後発医薬品を選ぶ患者の更なる増加が予想されるため調剤薬局に勤務する薬剤師には、従来の先発品に加えて後発医薬品についての知識も求められます。医療機関が薬剤の製品名でなく一般名で処方すると診療報酬で2点を加算できる「一般名処方加算」の影響で普及が加速、第1四半期は前期よりも1.1ポイント増えて25.3%に達しました。

従来、開業医が中心となって進めてきた一般名処方による後発医薬品の普及拡大ですが、大病院でも電子カルテやレセコンの一般名への対応準備が進んでいるため、算定に踏み切る可能性が指摘されています。厚生労働省は2012年度以降も数量シェア目標を新たに設定する予定で、薬剤費の抑制に余念がありません。

国内市場の変化に合わせて、後発医薬品企業の合併・買収も進んでいます。2012年4月にイスラエルに本社を置くテバファーマシューティカルが、傘下の大洋薬品工業と興和テバを統合させ「テバ製薬」をとして再スタートさせました。

同年8月にはファイザーがマイランの製品と営業部隊を取り込んで、新た事業体制を構築しました。ファイザーが後発医薬品に参入して早3年、マイランの約350製品を手中に収め、ようやく先行する後発医薬品専業企業や新薬系企業と同じ土俵で勝負ができる体制が整いました。

そのほかでは陽進堂が味の素製薬と合弁会社「エイワイファーマ」を設立しました。味の素が持つ輸液・透析関連製品の事業を継承する会社です。味の素の輸液等事業は赤字ですが、陽進堂にとっては味の素の新薬販売ルートを活用して後発医薬品を病院に販売できるというメリットがあります。企業間のこうした合併や提携は一定の事業規模が必要となる今後、さらに増えることが予想されます。

低分子薬品の特許切れピークを迎える2017年を前にして、市場で存在感を増しているのがバイオ後続品です。既に後発医薬品専業メーカーだけでなく、多くの製薬企業が開発や承認取得・販売へと動きだしています。企業間の提携も活発で、2012年には持田製薬がG-CSF製剤の製造承認を取得し、富士製薬と共同販売を行っています。